Categories: 仕事のスキル

建設業・建築にかかわる技能検定について

「技能検定」とは厚生労働省が管轄している「国家検定制度」で、いろいろな職種の検定があります。建設関係だけでなく、陶磁器製造や鉄道車両製造整備、時計修理、写真なんていうものもあります。今回は建設関係の技能検定について掘り下げてみたいと思います。

目次

技能検定とは


厚生労働省管轄のシステムで、働くために必要な技能もしくは身につけると有利に働く資格のことで、現在130種類あります。検定の実施は各都道府県で行われていて毎年前期と後期に分けて実施されています。最近よく聞くFP(ファイナンシャル・プランナー)やウェブデザイン、CC(キャリア・コンサルティング)などもこの技能検定が設定されていますが、これらは都道府県ではなく厚生労働省が指定した各業界の協会や協議会が実施しています。

各職種の検定は3級・2級・1級の階級制と職種によっては単一階級になっており、それぞれ合格すると技能士章を授与されます。それぞれの1級以上を取得することで、各ジャンルの職業訓練指導員試験に受験することができる資格を取得したことになります。

技能士と技術士の違い


すでに建築・建設系のお仕事に就かれている人はお分かりかもしれませんが、「技能士」「技術士」は別物です。ともに国家資格ではあるのですが、試験や認定をする管轄官庁が違います。技能士は上で説明したとおり厚生労働省の管轄ですが、技術士は文部科学省の管轄です。技術士については、また別の記事でご説明したいと思います。

建設関係でどれだけの数があるのか


厚生労働省が区分しているリストによれば、「建設関係」には34種類の技能検定が設定されています。これは技能検定の職種区分リスト上で、一番多くの種類を有する職種となっていて、建設・建築業がいかに技術職であるかを物語っています。

技能検定職種「建設関係」一覧表

造園、さく井、建築板金、冷凍空気調和機器施工、石材施工、建築大工、枠組壁建築、かわらぶき、とび、左官、築炉、ブロック建築、ALCパネル施工、タイル張り、配管、厨房設備施工、型枠施工、鉄筋施工、コンクリート圧送施工、防水施工、樹脂接着剤注入施工、内装仕上げ施工、熱絶縁施工、カーテンウォール施工、サッシ施工、自動ドア施工、バルコニー施工、ガラス施工、ウェルポイント施工、塗装、路面標示施工、広告美術仕上げ
資料出典:厚生労働省

さらに「建設関係」に入っていないものでも、建設・建築業に関わるものもあります。一番わかりやすいのは、木材関係に属している「機械木工」「家具製作」「建具制作」などの木工大工職に関わるもの、金属加工関係に属している「鉄鋼」「工場板金」なども建設・建築業に関わっているのは一目瞭然です。

下に職種に対して関わる技能検定の一覧を記載しておきます。

職種別検定対応表

建設業法技能検定職種
大工工事業建築大工
左官工事業左官
とび・土木工事業とび、型枠施工、コンクリート圧送施工、ウェルポイント施工
石工事業ブロック建築、石材施工、コンクリート積みブロック施工
屋根工事業建築板金、かわらぶき、スレート施工
管工事業冷凍空気調和機器施工、配管(建築配管作業)
タイル・れんが・
ブロック工事業
タイル張り、築炉、ブロック建築、
れんが積み、コンクリート積みブロック施工
鋼構造物工事業鉄工(製缶作業、構造物鉄工作業)
鉄筋工事業鉄筋施工 ※
板金工事業工場板金、建築板金
ガラス工事業ガラス施工
塗装工事業塗装、路面標示施工
防水工事業防水施工
内装仕上げ工事業畳製作、内装仕上げ施工、表装
熱絶縁工事業熱絶縁施工
造園工事業造園
さく井工事業さく井
建具工事業建具製作、カーテンウォール施工、サッシ施工
※鉄筋施工職種については鉄筋組立て作業と鉄筋施工図作成作業の2作業に合格する必要があります
資料出典:厚生労働省

技能検定受検に必要な実務経験年数


各技能検定には受検資格として、その資格に関わる業務での実務経験年数が設定されています。一番初歩の3級については、高校専攻科、専門高校卒から受検が可能で、高卒でない場合でも資格に関わる実務経験があれば0年で(つまり就職直後でも可能)受検資格が得られます。

2級についても3級合格後すぐに受検資格が得られますし、高校専攻科、専門高校卒の人も実務経験なしで受検資格を得られます。1級については2級合格後2年程度、3級合格後4年程度の実務経験期間が必要になります(職種と学歴等によって年数は異なります)。

技能検定はどのような試験内容なのか


検定試験は実技と学科の2種類で構成されていて、両方合格する必要があります。片方のみ合格した場合は、次回不合格になったものを受けて合格すれば認定をとることができます。例えば、実技は受かったけど筆記で落ちた場合は、次回筆記のみを受けられるということです。筆記とヒアリング実技のある英語検定などと同じですね。

検定の構成は、実技で制作作業試験・計画立案などで職種によってことなります。筆記試験は全50問(3級は30問)で正誤択一式と複数肢選択式が半々の割合です(3級は正誤択一式のみ、特級は複数肢選択式のみ)。学科試験は各都道府県の職業能力開発協会が実施しています。

技能試験から主任技術者(または営業所専任技術者)への道


各営業所に関わる業務の主任技術者(または営業所専任技術者)を専任で配置する必要があると、建設業法で決められています。つまりこの人がいないと仕事を請け負ってはいけないということになります。

建設業法 第26条 第1号 主任技術者及び監理技術者の設置等
建設業者は、その請け負った建設工事を施工するときは、当該建設工事に関し第7条第2号イ、ロ又はハに該当する者で当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「主任技術者」という。)を置かなければならない。
建設業法 第7条第2号 許可の基準
その営業所ごとに、次のいずれかに該当する者で専任のものを置く者であること。
イ  許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し学校教育法(昭和22年法律第26号)による高等学校(旧中等学校令(昭和18年勅令第36号)による実業学校を含む。以下同じ。)若しくは中等教育学校を卒業した後5年以上又は同法による大学(旧大学令(大正7年勅令第388号)による大学を含む。以下同じ。)若しくは高等専門学校(旧専門学校令(明治36年勅令第61号)による専門学校を含む。以下同じ。)を卒業した後3年以上実務の経験を有する者で在学中に国土交通省令で定める学科を修めたもの
ロ  許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し10年以上実務の経験を有する者
ハ  国土交通大臣がイ又はロに掲げる者と同等以上の知識及び技術又は技能を有するものと認定した者

この手の話は建設業に限らず、例えば旅行業の場合は各店舗に旅行業の取扱管理者資格を有する人が専任で配置されています。「専任」とありますが、ようは名義貸しや他の営業所との「兼任」ができないということです。

各技能試験の2級を合格することができたら主任技術者(営業所専任技術者)に一歩近づいたことになります。というのも2級検定合格後に3年以上の実務経験を積んでから主任技術者になることができる資格を得ると建設業法で規定されているからです。

技能士は就職や転職に有利になるか

転職についてですが、これは建設業に関わらず有資格者のほうが有利になるのはご存知のとおりです。とくに2級技能士認定を受けてからなることができる主任技術者は、実務経験を求められる資格であるので、実績評価が高くなりますから転職に有利なのは言うまでもありません。

就職の場合でも、高校専攻科などで学んだことの結果として3級ないし2級技能士認定を持っていれば、学歴だけの評価以上に勉強した結果として評価がプラスされますので、選考に有利になります。建築・建設関係を目指すのであれば受けておいて損はない検定だと言えます。

技能検定についてザックリと説明してみました。技能士にしても技術士にしても、自分の仕事に対する意欲を起こさせることや、自分自身を表すひとつの個性として用いることができますので、一度受検を検討してみてください。きっといいことに役立つはずです。技術士についてはまた別の記事でご紹介したいと思います。
r_ishikawa