2020年にサマータイムを導入して1、2時間前倒しするしないと、賛否両論でもめ始めました。オリンピックの競技(マラソンを通常時の5時スタートしたいとか…)のためか、はたまた欧米諸国に合わせたいのか。どんな理由にしろ1〜2時間前倒しになることで、建設業とくに現場作業員にどんな影響が出るのでしょうか? 2つのパターンに分けて考えてみましょう。
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北米諸国と欧州諸国を主に用いられている、標準時を1時間から2時間早めて太陽の出ている時間を有効活用しようというもの。省エネ効果もあるとされ、一般企業も参加した北海道や奈良の行政部門だけなど、日本国内でも自治体レベルで実施されたことがありますが、どれも不評で終了した過去があります。
日本の標準時子午線、覚えていますか? 兵庫県明石市に標準時を指し示す時計台が建っていますが、あの時計の針が、ある日を境に1時間か2時間進められるのです。毎朝6時に起きている人が、そのままのタイミングで起きると8時になっているということです。その時点で結構な影響が想定されます。
カスタマーサービスや事務系など、内勤系の人は9時〜6時の勤務の人が多いので別にして、より朝早い時間に出勤する人も多い現場作業員の人にとって、サマータイムが導入されて標準時が仮に2時間進められたらどうなるでしょうか? 下の2パターンが考えられます。
出勤時間の状況だけでも賛否が分かれると思います。お子さんがいる家庭持ちの方なら、早く出勤して早く帰るほうが家族サービス的にも良いだろうし、パワーワーク系の人はより身体に負担がかかるので生活サイクルは変えたくないという人もいるでしょう。ではそれぞれのパターンでどんな影響が考えられるのか、考察してみましょう。
普段あまり意識することはないと思いますが、地球が回るサイクルは変わらないので、太陽の出ている時間数と日の出日の入りのタイミングはまったく変わりません。つまり今までどおりの時間帯に出勤するパターンでは、時計の針が変わっても通常の生活リズムから変わらないので、身体にあまり負担にはなりません。ただし通勤ラッシュの精神的ストレスを受けそうな気がしますが…。
このパターンだと現場作業でサラリーマンなどより早い時間帯に仕事が終わることで、受けていた利点が受けられなくなる可能性があります。例えば、スーパーのタイムセールだったり、居酒屋などのハッピーアワーだったり、人の少ない時間帯の集客を目掛けて行われていたサービスは、対象から外れてしまいます。
さらに悪影響なのは、作業時間が減る可能性が大きく、作業効率が極端に落ちることが考えられます。夜間に作業ができる大規模の現場や内装業、道路敷設などは対応できそうですが、現場作業は騒音規制法や振動規制法などの兼ね合いがあるので、基本的に昼間に作業することになります。時計が早まった分、作業可能時間が2時間減ることになるので、作業時間自体が減ります。これでは、休憩時間の短縮や休日出勤などの過重労働が発生する可能性をはらんでいます。
通常時より2時間早く出勤しても、実は通勤ラッシュに巻き込まれるリスクがあります。なぜなら通常の5時は始発の時間帯です。朝まで飲んで帰ることがある人なら、始発が結構混んでいることをご存知ですよね? 鉄道会社がサマータイムにどれだけ対応できるかが未知数で、そんな始発時間帯が通勤ラッシュ時間帯のスタートとして2時間早く電車の本数が増やせるかどうか、今の時点ではわからないからです。
ということは、<早く出勤する人が増える+電車の本数は増えない=通勤ラッシュ発生!>ということになり、結局ラッシュに巻き込まれてしまうことが想定されます。車で通勤する人は、若干分散されて渋滞緩和など嬉しいことが起きそうですが、電車通勤の人にはちょっと不安が残ります。
利点としては、気温が上がりきる前から仕事をはじめられて、2時間早く終わることで暑い時間帯の労働が2時間カットされます。作業上の身体負担は軽減されそうです。ただ生活サイクルを2時間早めることになるので、それになれるまでは結構大変かもしれません。前日の深酒は禁物です。
ざっと書いても結構影響がありそうです。良いことと悪いことと分けて書きましたが、実は全てが表裏一体です。たとえばパターンBにある「最高気温時間帯から労働時間帯の2時間カット」されればいいですが、残業するとなると日没までの作業可能時間は3時間程度ありそうです。それで、朝は2時間相当早く動きださないといけないことになれば、過重労働の可能性がここにもあります。
考察のなかに、「騒音規制法」と「振動規制法」を持ち出しましたが、そもそもサマータイム実施とともに、これらのような関連法規が全部変わるのかどうかすら未知数です。サマータイムを導入したら、電波時計がずれるとか、基幹システムの時間がエラーを起こすとかと言われ始めましたが、それ以前に身体に悪影響を及ぼす可能性が大いにあるわけです。
オリンピック対策として発案された様相のサマータイム導入ですから、政府がオリンピック以外の業界や市民生活のことを想定するのはこれからということなのでしょう。現時点で考えられることとして会社によって変わってくると思いますが、安全に施工できるように作業工程の策定や安全対策など、入念に練る必要がでてきます。
できることなら、例えばパターンBでサマータイムに呼応して出勤時間が早くなった分を、1日で一番暑い1時頃を中心に、2〜3時間休憩時間(スペインのシエスタ的発想。でも拘束時間は長くなる)を設定し終業時間を日没あたりまで遅らせるなど、会社側も作業員の負担を軽減して作業効率を落とさない方法を考える必要がありそうです。